2022/07/06 10:48
6年程愛用している眼鏡がグラグラにゆがんで、何回かけてもずり落ちてくるようになったことがありました。
家のドライバーで締めても直らず、目が疲れたり、頭が痛くなったりしました。
この眼鏡を買った店は家から離れていたので、近所にある「眼鏡市場」に行き、たまたまいた店長に有料でもいいので修理できないかを聞きました。
すると店長は眼鏡をいろいろ観察しながら「これいつから使っていますか?」と聞き、僕は「6年ぐらい使っていますかね」と言ったら「この眼鏡、6年分の疲れがたまってますね。とっておきましょう。」と言われました。
この眼鏡を人に例えるような言い方が心に刺さりました。
続けて店長は「ちょっと15分いただけますか?」と言い、眼鏡のフレームをラジオペンチで、折れるのではないかと思うくらいグニャグニャに曲げ始めました。
曲げては戻し、伸ばしては曲げて、そのうちだんだん形が元に戻っていきました。店長が眼鏡をお店のカウンターの卓上に置くと、耳をかける部分がピタっと水平になって置かれました。
顔にかけてみるとぴったりフィットし、とても快感でした。
その眼鏡は眼鏡市場で買ったものではないのに、店長さんは「お代はいりません」と言いました。「疲れがたまったらいつでも来てください」と。
この経験から、「眼鏡市場」という会社はすごい!といろいろな人に伝えるようになり、いつか買い物をしたいと思うようになりました。
「ギブファースト」という言葉をよく聞きますが、その言い方は、後の見返りを期待しているように聞こえたりもします。しかしこのときお世話になった店長は何の見返りも求めていないように見えました。だからこそ、僕はそれ以来このお店と店長に何かを返したいと思い続けています。
この一件で学んだこと。
もちろん店長の親切心とプロ意識の素晴らしさもありますが、
言葉づくりのアイディアが、仕事も、お客さんの幸せも持続させるんだなあと、つくづく思いました。
「この眼鏡、6年分の疲れがたまってますね。とっておきましょう。」
僕は自分の眼鏡を見るたびにこの言葉と店長を思い出し続けるでしょう。
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◆この原稿は、ボイスメディアVoicyの音声配信番組、「高橋晋平の1日1アイデア」を参考に原稿化されたものです。
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